カップいっぱいのグリーンティー

ジャニーズWESTと神山智洋くん、ときどき日常話のブログ

『泣くロミオと怒るジュリエット』を観た話

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良いものと出会ったときって、書きたいことが溢れてくるよね。『泣くロミオと怒るジュリエット』も、140字に収まらないくらいの感想を書きたくなる舞台だった。

www.bunkamura.co.jp

私が観劇したのは2月19日。Twitterには書ききれない良さがあったからこのブログを立ち上げたのに、遅筆すぎてこんなタイミングでの公開になってしまった。2月下旬には東京の見切れ席チケットが残ってたから「もう1度観てもいいかな~」なんて思ってたのに、東京公演の後半はほぼ中止、大阪も一部中止が決まった(3月6日現在)。観劇できなかった照史くん担の方の無念を想像すると胸が締め付けられる。コロナめ…。
ウイルスより政府が憎い、というネタで書く方が自分的にも旬だけど、心がイガイガするのでその件は保留にして、2020年2月のロミジュリが素晴らしかったことを書きます。

誠実で熱心な桐山ロミオ照史くん

言うまでもなく私は<主演俳優 桐山照史>を観るためにコクーンへ行ったので、開演までの時間にパンフレットを斜め読みしているとき、本作のロミオが吃音だということに驚いた。驚いたと同時に幕が開いて、照史くんが見事に吃音で演じていることにまた驚いた。

全編関西弁で展開されることもあって会話はハイテンポ。しかし皆がワーー!っと喋って賑やかな空間にロミオの台詞がくると一転、吃音特有のつっかえ言葉を待つ空白が生まれてパッと静かになる。スピーディーに進む会話劇のテンポをぶった斬る演出で、序盤は客席全体がびっくりしていたように感じた。演る側としてもお稽古から相当な苦労があっただろうと思うし、初日などはめちゃめちゃ怖かったんじゃないかと想像する。ひとつ間違えば大失敗になりかねないチャレンジングな設定だったと思うけど、照史くんは見事に役に落とし込んでおられた。あの演劇人アベンジャーズなキャストで構成されたカンパニーを率いつつ、そのプレッシャーとも戦い、バラエティもアイドルも同時期にやってるんだから照史くんは凄い。

物語が進んでいくにつれて吃音が出まくる場面とそうでない場面の差に気づかされ、言葉や表情以外でもロミオの心情が表されていてとても良かった。吃音のディテールは台本に書ききれないだろうから、その塩梅が絶妙なところは照史くんの感覚によるものなのか、それとも全部細かく演出されたものなのか、私には知る由もないけどどちらにしても照史くんの芝居力が相当なものだということなんだろう。「なんでも器用にできるクセやめや!笑」と私の中で重岡くんが叫んでいる。

この記事を書きながら照史くんの芝居を思い返して、「器用ではあるけれど、技術屋っぽくないのは何故だろう」と考えているとき、本作を演出してる鄭義信さんがパンフレットで「誠実で熱心な桐山さん」と表現しているのを見つけた。誠実で熱心。まさにそれですね、鄭さん。技術を組み立てて表現しているというよりも、パッションで存在してる感。舞台映えするわけだ。いつも言ってるけど、照史くんは近い将来マジで大物になる人だ。今のうちからその才能に気づいてるオタク(私含む)、先見の明があるわ。

助演女優賞は八嶋さん。ありがとうヤッシー

照史くんの次に心底楽しみにしていたのが、ヤッシーこと八嶋智人さんのお芝居。この巡り合わせがとても嬉しかった。2000年代のテレビを見て育った私にとって、ヤッシーといえば“面白くて芝居が上手いおじさん”という印象がほとんどだけど、主宰している劇団があることも知っていたし、劇場で目の当りにしたら圧倒されるだろうなと確信してた。確信しすぎてもう観た気になっていて、「きっと凄いよね!観なくてもわかる!」なんて思っていたから今までチケット購入に至らなかったというのが正直なところ。(貧乏なので本命推し以外の公演に使える金がないというのもある。)だからこそ、ジャニーズWESTのチケットで八嶋さんの芝居まで観れるというのは超お得な好機だったわけだ。

八嶋さんが演じたソフィアは、ジュリエットの兄・ティボルトの内縁の妻。そもそもこの舞台は女性の登場人物も男性が演じる“逆宝塚”状態の作品だけど、『ココリコミラクルタイプ』世代な私は彼の女装を見慣れてるし、花柄のスカートにサザエさん風な髪形でちょこまか動く“オバちゃん”な姿はむしろ親しみやすく、本当のオバちゃんよりもオバちゃんらしさを感じるくらいの自然さだった。

冒頭のシーンで観客全員の好意をかっさらい、後半は人間力と女性ならではのパワーに溢れた生き様で圧倒するソフィア。特に1幕終盤でティボルトから戦争の辛い記憶を聞く場面は素晴らしかった。高橋努さん演じるティボルトの悲痛な告白だけで呼吸が苦しくなるほど感情が揺さぶられるのに、それを受け止めていくソフィアの悲しさと優しさと強さといったらそれはもう…!!涙なしには見られない…!!!!全部を受け止めたうえで「一緒に生きていこう。忘れて生きていこう。」とティボルトを明るく支えようとするソフィアの愛とか、絶望したまま死に向かっていく彼を止めたいのに呼びかけることしかできない悲しさとか、あーーもう書いてるだけで思い出して涙がこみ上げてくる!感情が尾を引く最高の観劇体験をさせてくれた八嶋さんにどうしても気持ちを伝えたくなり、柄にもなく直接リプライを送ってしまったりして。そしてお返事をもらい更に好きになったりして。

ありがとう八嶋さん。めちゃめちゃに楽しんで、本気で芝居してるあなたは最高でした。カムカムミニキーナもちゃんとチケットを買って観に行きます。いろいろあるけど楽しくお芝居してください。(急に私信)

お土産は解釈の余白で

ジュリエットの計画を知らないロミオがあっけなく死に、後を追ってジュリエットも死んでしまうという超有名な場面を観ながら、「あ…そういえば私、この原作があんまり好きじゃなかったな」と思い出した。主人公の2人が若すぎるし、若さゆえにアホすぎるから、特に終盤は感情移入できなくて気持ちが迷子になる。『泣くロミオと怒るジュリエット』にもうら若きカップルの筋書き上のアホさはあって、ロミオに対しては「初めての恋で死ぬなや…あんたまだ人生で一発しかヤッてないやん…」って思っちゃうし、ジュリエットに対しては「散々男に泣かされてきたなら今回も切り替えて次の恋を見つけようよ…あんたは強い女やで…」と思わずにはいられない。特にロミオはリア恋アイドルこと照史くんが演じてるので、「その恵まれた容姿をもちながら若死にするなよ!もったいない!私に出会ってくれ!」とか思っちゃう。パンフレットによれば、出会って恋に落ちて燃え上がって死ぬまでが“わずか3日ほどの時間”だそうで、とにかく早い。ピュアかよ(ピュアなんだよ)。

客席で静かに「うわぁ~やっぱり死んだよ~早いよ~~死ぬなよ~~」とか思っていると、その先に想像もしなかった素晴らしい幕切れが展開されて私の(主人公2人の行動に対する)不満は丸ごとどこかへ吹き飛んだ。抗争で入り乱れる人々の混沌や悲鳴。視界すべてが染まるほど大量の赤い紙吹雪。大切な人を失い、それでもまだこの世で生きている人たちの黒装束。あの世に行った者たちの真っ白な衣装と、幸福そうな顔、祝福。綿密に描かれた絵画のような構図の気持ちよさと、溢れる色のインパクト。

演劇や映画のお土産にしたいものナンバーワン、解釈の余白。これが最後にドカンとドロップされたのが最高だった。しかも視覚的にも美しいというトッピング付き。心から拍手。大拍手。有名な原作があるからこその演出の妙で感動させられたのは『オセロー』に通じる体験だけど、『オセロー』は神山くん演じるイアーゴーの表情一点で落としたのに対し、『泣くロミオと怒るジュリエット』は舞台いっぱいの画で落としていて、そんな違いを反芻して味わうのもまた楽しかったりして。エンターテイメントって最高だね。嗚呼、ロミオもイアーゴーももう一度生で観たい。

他にも橋本淳さん演じるベンヴォーリオの胸に秘めた悲劇とか、警部補のカラスを演じた福田転球さんの凄みとか、もっと書けるけどこの調子でいくと記事公開が4月になっちゃいそうなので省略。ともあれ2020年の観劇初めにぴったりの最高の作品だったので、現時点で中止発表されてない公演の幕がちゃんと上がることを祈って、そして素晴らしい作品を作り上げているキャストとスタッフの皆さんが納得いく形で終えられることを祈って、この記事はおしまい。

3月10日 追記

開催検討中だった残りの大阪公演も中止になってしまった。政府への怒りで震える。
自粛要請が出た以上、幕を開ければ世間からバッシングされ、イメージ商売の芸能人や事務所その他関連会社は痛手を負う。だからといって公演を中止すれば自己責任、政府は“要請”しただけだから損害の補償はしてくれない。どちらに転んでも大損害。エンターテイメントとその業界で働く人たちをバカにしすぎではありませんか。
私がやんや言っても変わらないのでしょうけど、変わらないからといって口を噤むのは「無関心」と同義で政府と同罪になると思うので今後も言葉にしていくつもり。ふざけんな。

ロミジュリカンパニーの負担や負債が最小限になりますように。キャスト・スタッフ全ての人が今後も楽しく舞台作りをしていくことができますように。とりあえず今日はそう祈ることしかできない。